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創薬研究の戦略とツール・テクノロジー

創薬・開発研究の話題一覧

▼2015/4
話題23:USFDA の2014年度の新規医薬品の概要

▼2013/10
話題22:将来を見据えた医薬品開発

▼2012/8
話題21:医薬品開発のプロダクテイビティーとPGバイオマーカー

▼2011/12
話題20:創薬テーマとベネフィット

▼2011/12
話題19:中国における医薬品開発

▼2011/3
話題18:新規医薬品の承認

▼2011/2
話題17:今や、バイオマーカーの研究なくしては医薬品の開発は考えられない!

▼2010/7
話題16:何が創薬には求められるのか?

▼2010/7
話題15:新医薬品の開発動向と取り組み

▼2010/2
話題14:代謝物の安全性評価

▼2010/1
話題13:創薬テーマと開発の成功率・開発期間

▼2009/10
話題12:医薬品開発におけるリスク評価

▼2009/4
話題11:2008年度USFDA承認新薬からみた研究開発動向

▼2009/1
話題10:わが国における生物学的同等性試験のバイオウエーバーについて

▼2008/9
話題9:創薬と研究開発費

▼2008/1
話題8:初めてのヒト試験における投与量の算出と考え方

▼2007/9
話題7:パイプラインの拡大

▼2007/8
話題6:何が、研究開発に求められるているのか?

▼2007/4
話題5:2006年、米国FDAで承認された新薬、新規な作用機作は少なく22個

▼2007/1
話題3:創薬の夢と風土について

▼2006/9
話題2:創薬テーマと開発の成功率

▼2006/9
話題1:USFDAの白書:革新と停滞 新薬へのクリティカル・パスに対する挑戦と課題及びオポチユニティーについて

最新の話題

創薬・開発の話題3:創薬の夢と風土について更新日:2007年1月8日

現在、わが国のみならず欧米の製薬企業は、新薬が思うように創出できないことから、創薬能力を高めるため、多様な施策を取っている。
この十数年間、企業で推進されてきた業務の効率化、研究機能の集中化、分業化、ロボット化、成果主義、能力主義等が、企業や研究者の創薬能力を低下させ、またブレイクスルーを妨げてきたように思われる。例えば、今から十数年前に導入されたコンビナトリーケミストリーやハイスルプットスクリーニングは、まさに効率化を追及した典型的なケースであり、その結果、見出された化合物は”drug like”でないものが多かった。また、成果主義や能力主義の導入は、結果に対する適正な評価や人事が前提になっていなければならないが、その評価自体が非常に難しく、徒に時間を浪費させてきたように思われる。更に、創薬における真の評価は新薬が承認されて始めて可能であり、それには10年の歳月を待たなければならない。この根本命題に対する答はない。その結果、研究者はインセティブを与えられるよりも、むしろ逆に疲れてしまったような気がする。 
創薬能力を高めるためには、研究者が長期的な視点に立ち、燃えるような情熱と夢を持って、自由に発想でき、またお互いに競争を繰り広げることができるような研究風土を再度作りあげことが非常に重要であろう。

京大大学大学院薬学研究科杉本八郎教授が書かれた創薬についての3つのエッセイを添付した。

ノーベル物理学賞受賞の江崎玲於奈氏が、自分の講演の締めくりとして “ノーベル賞をとるために、してはいけない5か条”について話をされると、聴衆者は大いに刺激され、奮起されるそうである(日経新聞朝刊、“私の履歴書”2007年1月1日(月曜日より)。

ノーベル賞をとるために、してはいけない5か条

  • 第一に、今までの行き掛かりにとらわれてはいけません。しがらみという呪縛を解かない限り、創造性の発揮などは望めません。
  • 第二に、教えはいくら受けても結構ですが、大先生にのめり込んではいけません。のめり込みますと権威の呪縛は避けられず、自由奔放な若さを失い、自分の創造力も萎縮します。
  • 第三に、無用ながらくた情報に惑わされてはいけません。約20ワットで動作するわれわれの限定された頭脳の能力を配慮し、選択された必須の情報だけを処理します。
  • 第四に、自分の主張を貫くためには戦うことを避けてはいけません。
  • 第五に、子供のようなあくなき好奇心と初々しい感性を失ってはいけません。

創薬関係のツールとテクノロジー

現在、一個の新薬を開発するのにおよそ1200億円の研究開発費と10年の年月を要すると云われており、新薬開発の道のりは非常に長く遠いと云わざるを得ない。
それだけに、21世紀の新薬開発には、旧世紀の古いテクノロジーやコンセプトを棄て、革新的なツールやテクノロジーを駆使し、できるだけ速やかに安全性と有効性の優れた医薬品を患者さんに届けなければならない。

新薬の研究開発は、開発候補薬物を創製する創薬研究とその候補薬物を前臨床試験、臨床試験を通して有効性及び安全性を確認し、製造販売承認を得る開発研究からなる。
現在、満足した治療薬がない疾患も数多くあり、また、治療薬があっても様々な問題を抱えた薬物も少なくない(SPDF1)。
創薬研究の流れを図1に示したが、もっとも大切なことは創薬テーマの選択、どのような領域でどのような治療薬をどのような戦略で研究開発していくかであろう。

研究テーマが決まれば、シーズ探索→アッセイ系の確立→リード化合物創製→リード化合物最適化を経て、物性、生物活性、薬理活性、毒性、薬物動態等がある程度満足できる開発候補薬物が選択され、開発研究のステージへ進む。リード化合物が4個あれば、開発候補薬物を1個創出できればよいと云われている。

従来、創薬研究は、有機合成研究者や薬理研究者の勘と経験を頼りに微生物が産生する物質や天然の薬物を出発に取組まれてきた。
しかし、現在では、近年の生物医学やITの進歩により、特に、一連の創薬プロセスのすべてにゲノムサイエンスを幅広く取り入れ、より科学的および合理的に開発候補薬物を創出する、いわゆるゲノム創薬へと変化しつつある。

今後、図に示すように多種多様なテクノロジーやツールを如何に駆使するかが企業の新薬創出力を左右するのではないかと予想される。

図1. 創薬研究の流れ

開発研究の戦略とツール・テクノロジー

開発研究は、図1に示すような流れになり"Critical Path"と云われている。
現在、前臨床試験から申請までの成功率は10%弱で、最近, 特に問題になっているのは、開発後期のP2やP3試験で有効性や安全性に問題があり、開発が中止することで、このステージでの成功率は60%と云われている。
実際、この数年、新薬の承認数も少なくなり、質・量的にも大きな問題になっている(KPDF1)。

米国の食品医薬品局(USFDA)は近年の生物医学の革新により、重篤な疾患の予防、治療および治癒に大きな希望が見えつつあるにも拘わらず、より安全性・有効性が優れ、より使いやすい医薬品製剤が必ずしも患者さんに届けられていない事に大きな懸念を抱いている。
これからの開発研究は図1に示すよう新しい概念を取り込んだツールやテクノロジーのブレイクスルーにより、In vitro や動物からヒトでの予測性を高めると同時に、従来の多数の集団を対象とした臨床試験をも色んな面で革新化する必要がある。

図1. 開発研究(クリティカルパス)の流れ

図2. 前臨床試験